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自己破産の手続き①~同時廃止事件と管財事件の違い

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[更新日]2021/08/15 1241 -

自己破産手続きは大きく2種類に分かれていて、どちらの手続きになるかによって流れが大きく変わってしまうということです。

2種類の自己破産手続きとは、「同時廃止事件」と「管財事件」のことです。以下で、それぞれについて概要をご説明します。

(1)同時廃止事件
同時廃止事件とは、自己破産を裁判所に申し立てて、破産手続きの「開始決定」が出ると同時に(手続きの)「廃止決定」も行われる事案のことです。

債務者に見るべき資産がない場合には、資産を換価して配当を行うことができませんし、それらの業務を行う破産管財人を選任しても意味がありません。

そのため、裁判所が破産手続開始決定を出すと同時に破産手続きは終了(廃止)になり、免責に関する手続が残るのみとなります。

手続き開始と「同時」に事件が「廃止」(終了)になるために「同時廃止」と呼ばれます。

平たく言えば、申立人に資産がなければ配当もできず、破産手続きを進めてもやることがないので、手続きは始まると同時に終わるということです。

平成31年・令和元年の司法統計によると、個人(自然人)が申し立てた自己破産の件数は72,307件で、同時廃止で終了した件数は45,791件です。同時廃止の件数の中には法人の事案が含まれてる可能性もありますが、それはごく稀です。
したがって、個人の自己破産手続きの60%以上は同時廃止で終了しているといえます。

(2)管財事件
管財事件とは、債務者にある程度の資産がある場合に、一定の資産を換価して債権者へ配当する手続きを行う自己破産手続きのことです。

自己破産手続きで免責が許可されるとすべての借金が免除されますが、その代わり、一定の範囲を超える資産がある場合にはその資産を清算する必要があります。
そのための手続きが「管財」手続きです。

この手続きを行うためには破産「管財」人が選任されるので、「管財事件」と呼ばれます。
管財事件にも、「通常管財」と「少額管財」の2種類があります。

通常管財
通常管財とは、その名のとおり、管財事件の通常的な手続きのことです。

個人の自己破産で、換価すべき財産がある程度高額である場合は、原則として通常管財の手続きが行われます。

管財事件では、破産管財人の報酬などに充てるために、申立人は裁判所に予納金を納めなければなりません。
予納金の額はケースによって裁判所が判断しますが、通常管財では原則として50万円以上とされています。

少額管財
少額管財とは、管財手続きの規模が小さいケースについて、通常管財よりも手続きを簡略化した管財事件のことです。

個人の自己破産で、換価すべき財産が少ない場合は、手続きが複雑でない場合が多く、また債務者が多額の予納金を支払うことも難しい場合が多いので、簡易的な管財事件として少額管財の手続きが行われます。

少額管財の場合の予納金は、20万円程度とされるのが通常です。

このように、申し立てた事件が管財事件になると予納金を準備する必要があり、申立人(債務者)としては同時廃止の場合よりも費用が掛かることになります。

(3)管財事件になるケースとは?

管財事件になると、費用の面でも期間の面でも債務者の負担が大きくなりますので、どのような場合に管財事件となるのかは気になるところでしょう。

管財事件には、以下の4つの類型があります。これらの類型のどれかに該当する場合は、原則として管財事件になると考えておくべきです。

①配当が見込まれる(一定以上の財産がある)場合

前述のとおり、債務者にある程度の財産がある場合には、その財産を換金して債権者へ配当する必要があるので管財事件となります。

東京地方裁判所では、33万円以上の現金や20万円以上の換価可能な資産がある場合には、管財事件とする運用になっていますが、その基準は裁判所によって異なります。

②債務者が会社の経営者や個人事業主の場合

この場合は事業上の財産や債権債務関係を清算するために複雑な手続きを要するため、原則として管財事件となります。

もっとも、会社について別途、管財事件として処理されている場合や、個人事業主でも事業上の財産や在庫などをほとんど持たない職種の場合は、同時廃止事件となることもあります。

③財産の調査が必要な場合

財産状況が複雑で詳しい調査が必要な場合や、財産隠し、財産の申告漏れの可能性があるような場合は、破産管財人による財産調査を行うために管財事件となる場合があります。

財産状況が複雑な場合でも、弁護士に依頼して綿密な調査を行った上で、適切な申し立てを行えば、同時廃止事件となる可能性もあります。

④免責の調査が必要な場合

債務者にめぼしい財産がない場合でも、免責不許可事由があるのではないかと疑われる場合には、破産管財人が免責に関する調査を行うために管財事件となる場合があります。

この場合も、弁護士に自己破産申し立てを依頼して、詳しい事情を申告することで同時廃止事件となる可能性もあります。