任意整理とは メリットとデメリット

[掲載日]2021/08/28 224 -

任意整理は、債権者(お金を貸している金融業者)に対し、将来利息をカットしてもらい、残った借金を3~5年の分割で返済するという内容で和解し、無理なく返済できるようにする交渉のことです。
基本的には、将来利息(分割で返済する3~5年間にかかる利息)のみカットしてくれる場合が多いです。つまり、借金の元本と、和解するまでの利息について36回~60回で分割して支払うことになります。
もっとも、消費者金融の中には、最近は将来利息のカットではなく、将来利息の利率を下げる形でしか和解に応じない業者も出てきています。
任意整理をすることで、将来利息がなくなったり、返済期間の延長によって1回あたりの返済額が減ったりするため、返済の負担が小さくなります。
任意整理のメリット
任意整理をすることで、以下5つのメリットが期待できます。
1.返済期間中の利息を免除できる
返済期間中の利息の免除は、任意整理の最大のメリットです。
債権者との協議がまとまれば、そこから借金を完済するまでの利息が免除されます。
2.遅延損害金を免除できる
任意整理では、利息以外にも発生している『遅延損害金』の免除も期待できます。
遅延損害金とは、期日までの返済が間に合わなかった場合に生じるペナルティです。
返済に困っている人のなかには、遅延損害金が高額になってしまい、ますます返済が難しくなったという人もいるでしょう。
任意整理では、そのような遅延損害金を免除できないか、もしくは減額できないかを交渉します。
3.手続き後の借金の返済方法を変更できる
任意整理をすることで、毎月の返済額や送金先が変わることもあります。
現状の収支に合わせ、毎月の返済額を減らすことで、無理なく返済を続けることができます。
本来の返済期間より長期になってしまっても、利息はカットしてありますので、借金が増えることはありません。
また、弁護士や司法書士に依頼した場合、手続き後の振り込み先が債権者ではなく、弁護士や司法書士の事務所の口座になるケースもあります。
4.過払い金が発見できる
任意整理では、業者と交渉する前に、『引き直し計算』というものが行われます。
引き直し計算とは、取引を開始した日から現在までの利息を、利息制限法で定められた上限金利である15~20%で計算し直すことです。
これにより、払い過ぎた利息が発見された場合、過払い金として請求することができます。
過払い金はそのまま借金返済に充てられ、借金を減額することが可能です。
また、過払い金が借金額より多い場合は、あなたの手元に戻ってきます。
5.業者からの支払催促が止まる
任意整理をすることで、業者からの催促が止まることは、精神的にも大きなメリットなのではないでしょうか。
弁護士や司法書士に依頼すれば、最短即日で催促を止めてもらえるでしょう。
6.職業制限がない
自己破産は手続き中一定の職業に就業できなくなりますが、任意整理では職業制限はありません。
職業制限に含まれる職業に就業している人は、働き続けるためには任意整理や個人再生を選択する方がよいでしょう。
7.財産を維持できる
自己破産の場合は、原則として不動産や車などある程度の資産価値を有するものはすべてお金に変換する形で処分し、債権者へ分配されてしまいます。
そのため、基本的に破産者の元に大きな資産は残りません。
その一方で、任意整理は私的な整理であるため、財産の処分は必要ありません。
したがって任意整理の場合、資産を手元に残しながら、借金の減額を実現することが可能となります。
仮に、担保付きの借金がある場合でも、任意整理の対象から外すことによって抵当権の実行を逃れることができる可能性があります。
8.周りに知られることはない
自己破産の場合には、申立てを行う際に、家計の収入状況や、勤務先の退職金の有無などの申告が必要となります。
これらの書類を入手する過程で、家族などの周りに自分が自己破産することを知られてしまう可能性があります。
しかし、任意整理にはこれらの書類は必要ありません。
そのため、周りに知られずに借金を減額することが可能になるのです。
また、任意整理の場合は国が発行する官報に記載されないのも、一つのメリットだといえます。
9.手続きに手間がかからない
任意整理は、金融業者と私的な交渉をすることで、将来利息や遅延損害金の免除を図ります。
私的な交渉であるため、法律によって定められたルールはなく、柔軟に借金の減額について交渉することが可能となります。
また、任意整理は裁判所を介さないため、わざわざ裁判所へ出向く必要はありませんし、面倒な書類などを集める必要もないのです。
任意整理を行うことで発生するデメリット
任意整理を行うことで発生するデメリットについて、詳しくみていきましょう。
1.ブラックリストに登録される
すべての債務整理に共通することですが、債務整理を行うと、今後数年は新たにお金を借り入れたり、クレジットカードを作成したりすることができなくなってしまいます。
債務整理を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されてしまうのです。(いわゆる「ブラックリスト」入り)
クレジットカード会社やローン会社は、審査の際にこのブラックリストを確認するため、情報が載っている間は、まず審査が通ることはないでしょう。
2.借金の支払い義務はなくならない
すべての債務が免責される自己破産とは異なり、任意整理では元本が減額されるということはまずありません。
あくまで利息や遅延利息のカットを求めたり、支払期限の延長を求めたりする程度です。
そのため、残された元本については月々定められた金額を継続的に支払い続けなければいけません。
そのため、借金の総額は減少したとしても、借金の支払いから抜け出せるわけではありません。
3.すべての業者が交渉に応じてくれるわけではない
金融機関の中には、はじめから任意整理に応じてくれないところもあります。
一般的には、貸付の期間が1年以内の債務については、任意整理に応じてくれない金融機関が多いです。
また、過去に同じ業者との間で任意整理交渉を行った場合や、一度も返済履歴がない場合には、完済の見込みがないと思われてしまうため、和解が成立しない可能性が高いです。
4.借金を大幅に減額できるわけではない
任意整理は、他の債務整理のように、借金の元本自体が大幅に減額されるわけではありません。
ただ、任意整理を行った末に、過払い金を発見した場合、借金を減額できる可能性があります。
5.今後同じ会社からは借金できなくなる
任意整理は事実上の債務不履行であり、債権者との借入当初の約束を破ったことになるため、債権者からの信頼を失ってしまいます。
特に債権者が金融機関の場合、任意整理をしたという事実は、債権者の独自のデータベースにて半永久的に記録されます。
そのため、たとえ信用情報機関の事故情報が抹消されたとしても、同じ金融機関から再び借金をすることはまず難しいでしょう。
